玄関に庇を後付けするメリット・デメリットは?リフォーム時のポイントも解説

近年では、シンプルなデザインを重視したり、初期コストを抑えたりする目的で、新築時にあえて庇を設置しない住宅も増えています。庇は雨や日差しを防ぐ役割があり、設置するメリットも多いため、後付けを検討するのも一つの選択肢です。
ただし、庇の設置には費用がかかるといったデメリットといえる側面もあるため、庇の役割や必要性を理解したうえで慎重に判断することが重要です。
本記事では、玄関に庇を後付けするメリット・デメリットや庇の素材、後付けする際のポイントについて解説します。
玄関に庇を後付けするメリット
玄関に庇を設けることで、雨の日の出入りがスムーズになるほか、玄関まわりの保護や外観の演出にもつながります。まずは、玄関に庇を後付けすることで得られる、4つのメリットをご紹介します。
出入りするときの雨除けになる
玄関に庇を後付けすることもメリットとして、雨の日でも濡れずに出入りできることが挙げられます。ドアの前で傘をたたんだり、家の鍵を取り出したりする際に、庇があると濡れずに済むため快適です。来客時にも庇があれば、相手を濡らさずに玄関で対応できます。
また、荷物の「置き配」を利用する場合も、庇があれば荷物が濡れるのを防げるでしょう。
玄関内の温度上昇を抑える
庇を後付けすることで、直射日光が玄関ドアに当たるのを防ぎ、玄関内の温度上昇を抑えることが可能です。特に夏場は、庇が日差しを遮ることで玄関まわりに熱がこもるのを防ぎ、室内の快適性向上にもつながります。
カーテンやすだれで日差しを防ぐ方法もありますが、視界を遮ってしまうのが難点です。その点、庇はドアの上部に設置されるため、景観を損なうことなく日よけ効果を得られるのが大きな魅力と言えます。
玄関ドア・たたきの汚れや劣化を防げる
庇があると、雨水や紫外線から玄関ドアや「たたき(靴を履いたり脱いだりする箇所)」を守り、汚れや劣化を防ぐことが可能です。庇がないと玄関ドアに雨水や紫外線が直接当たり、汚れ・劣化の原因になりかねません。
また、庇のない玄関では、雨水の跳ね返りによってたたきが汚れることがあります。庇を後付けすることで、玄関ドアの劣化の防止や、掃除の手間を軽くできる点はメリットと言えるでしょう。
家の外観のアクセントになる
玄関にデザイン性のある庇を後付けすると、外観の印象を大きく変えられます。アルミ製や木製、ガラス素材の庇など、建物の雰囲気に合わせた素材を選ぶことで、住宅全体のデザイン性が高まるでしょう。
庇のデザインひとつで家の顔である玄関の印象が変わるため、外観をおしゃれに見せたい方にとって、庇の後付けは有効な手段と言えます。
玄関に庇を後付けするデメリット
玄関に庇を後付けすることには多くのメリットがある一方で、注意すべき点もいくつかあります。設置費用の負担や採光への影響、定期的なメンテナンスの手間など、事前にポイントを押さえておくことが大切です。
ここでは、庇後付けの代表的なデメリットをご紹介します。
費用がかかる
庇を後付けする際には、設置費用が発生します。設置費用の目安は、10万~30万円ほどで、デザイン性や耐久性の高い素材を選ぶほど価格も高くなる傾向があります。
既存の壁面に構造的な補強が必要な場合や、大きな庇を設置する場合は施工費がさらに高くなることもあるでしょう。庇の後付けは、費用を踏まえたうえで比較検討することが大切です。
室内が暗くなる場合がある
庇を設置すると、玄関ドアから日差しが入りにくくなり、室内が暗くなる場合があります。
庇のサイズや素材、設置位置によっては、照明に頼る時間が増えることも考えられます。
玄関の明るさを確保するためには、光を通す素材(ガラスやポリカーボネートなど)を選ぶなど、採光を意識することが大切です。日差しを遮るという機能が逆効果にならないよう、設置前によく検討しましょう。
定期的なメンテナンスが必要になる
庇は常に雨風や紫外線にさらされるため、長く快適に使うには定期的なメンテナンスが必要です。具体的には、ネジや接合部の緩み、塗装のはがれ、コーキング部分の劣化などが放置されると、雨漏りや腐食、部材の落下といったトラブルにつながる恐れがあります。
一般的には、5年に1回を目安に専門業者による点検を行い、不具合があれば早めに補修するのが理想でしょう。
また、塗装は10〜15年ごとを目安に塗り替えを検討することも大切です。さらに、防水工事も同様に10〜15年ごとの実施が推奨されています。
庇の後付けを検討する際は、初期費用だけでなく、これらの維持管理の手間や将来的なコストも視野に入れて判断することが大切です。
玄関に後付けできる庇の素材
玄関に庇を後付けする際は、選ぶ素材によって、見た目・費用・耐久性などが大きく変わります。アルミやガラス、ポリカーボネートなど、素材ごとの特徴を理解しておくことで、自宅の外観や使い勝手に合った庇を選びやすくなるはずです。
ここでは、代表的な庇の素材の特徴や費用相場をご紹介します。
庇の素材 | 費用目安 |
アルミ製 | 13万~17万円 |
ガルバリウム鋼板製 | 10万~20万円 |
ガラス製 | 20万~40万円 |
ポリカーボネート製 | 12万~15万円 |
木製 | 5万~15万円 |
アルミ製
アルミ製の庇は、軽くて腐食しにくく、長期間きれいな状態を保ちやすいのが特徴です。実際に、多くの住宅でアルミ製の庇が採用されており、価格もリーズナブルです。
アルミ製の庇を後付けする際の費用は、13万~17万円程度が相場となっています。シンプルなデザインが多く、さまざまな外観の家にもなじみやすいのもメリットです。
一方で、見た目のシンプルさから、高級感を求める場合には物足りなさを感じることがあるかもしれません。メンテナンスの手間を減らしつつ、スッキリとした印象にしたい方には、アルミ製の庇が適しています。
ガルバリウム鋼板製
耐久性を重視する方には、アルミニウムと亜鉛を混ぜたガルバリウム鋼板製の庇がおすすめです。ガルバリウム鋼板は、サビに強く、屋根や外壁材としても使われるほど優れた耐久性を誇ります。
玄関のように風雨にさらされやすい場所でも劣化しにくく、長期間安心して使える点が魅力です。見た目はスタイリッシュでモダンな住宅と相性が良く、外観を引き締める効果も期待できます。
ガルバリウム鋼板製の庇を後付けする際の費用は、5万~10万円程度が相場となっています。ガルバリウム鋼板製は、丈夫で長持ちする庇やスタイリッシュな庇を探している方におすすめです。
ガラス製
おしゃれな玄関まわりを演出したい場合には、洗練された印象のガラス製の庇を採用するのも一つの方法です。ガラス庇は透明感があり、玄関の明るさを保ちながら雨を防ぐという機能性とデザイン性を両立できます。
モダンなデザインの住宅との相性が良く、すっきりとした印象を与えられるでしょう。ガラス製の庇を後付けする際の費用は、17万~30万円程度が相場となっています。
ただし、他の素材に比べると遮光性が低いため、玄関ドアへの紫外線ダメージが気になる場合は、他の素材を検討しましょう。
ポリカーボネート製
コストと機能のバランスを重視するなら、ポリカーボネート製の庇がおすすめです。ポリカーボネートはプラスチックの一種で、透明度が高く軽量でありながら、衝撃に強いのが特徴です。
実際に、カーポートやバルコニーの屋根材としても多く使われています。紫外線カット効果にも優れているため、玄関まわりの劣化防止にも役立ちます。
ポリカーボネート製の庇を後付けする際の費用は、12万~15万円程度が相場です。デザイン面ではやや安価に見えることもありますが、機能性を重視したい方にとっては理想的な素材と言えます。
木製
木材は、自然素材の温かみを活かしつつ、デザイン性も重視した庇を求めている方におすすめの素材です。特に、和風住宅やナチュラルテイストの住まいと相性が良く、落ち着いた雰囲気を演出できます。
近年では、庇の裏側や腕木など目に触れる部分に木材を用い、上面にガルバリウム鋼板やアルミを組み合わせる構造が主流となっています。これにより、見た目の美しさを保ちつつ、雨風への耐久性も確保することが可能です。費用相場は、5万~15万円程度です。

庇は、玄関以外に「勝手口」に後付けするケースもあります。費用は玄関の半分程度が目安です。
玄関に庇を後付けする際のポイント
庇を後付けする際には、素材やデザインだけでなく、法的な規制や施工方法の確認も重要です。見た目だけで選んでしまうと、後々トラブルや後悔につながってしまう恐れがあります。
ここでは、玄関に庇を後付けする際に注意すべき4つのポイントをご紹介します。
増築扱いにならないように気をつける
玄関に庇を後付けする際は、増築扱いになる可能性に注意が必要です。特に、屋根だけでなく柱を伴う庇は、建築基準法上の「建築物」として扱われることがあり、その分が建ぺい率に加算されることで、固定資産税が増額する可能性があります。
建ぺい率とは、敷地面積に対する建築面積の割合であり、地域ごとに上限が定められています。上限を超えると違法建築と見なされる恐れがあるため、施工前には、必ず自治体の建築担当窓口やリフォーム会社に相談し、法的に問題のない範囲での設置を行いましょう。
家の外観を意識してデザインや素材を選ぶ
玄関の庇は雨風を防ぐだけでなく、家の第一印象を左右するため、住宅全体のテイストに合わせて素材やデザインを選ぶことがポイントです。
建物全体のデザインや色味と調和していない庇を選ぶと、違和感のある外観になってしまう可能性があります。仮に、モダンな家に和風の庇を取り付けた場合、違和感を覚えるかもしれません。
全体のテイストや玄関ドアとのバランスを踏まえて選ぶことで、住まいの魅力を引き立てる美しい外観に仕上がります。
雨樋をどうするかについても考える
玄関に庇を後付けする際は、庇の上に落ちた雨水をどう排水するか、雨樋(あまどい)についても検討する必要があります。庇を取り付けただけでは、雨水が周囲に垂れ流しになり、地面の泥はねや滑りやすさにつながるリスクがあるためです。
適切に雨水を流すためには、庇に雨樋を取り付けて、排水場所まで導水する設計が必要です。外観が気になる場合は、雨樋を庇のフレームに沿わせることや、建物側に寄せて目立たないようにする工夫が求められます。
素材や配管の色を建物に合わせて選ぶことで、美観と機能性を両立できるでしょう。
DIYではなくリフォーム会社(プロ)に依頼する
庇の後付けは、見た目以上に専門的な作業が必要です。取り付け方法を間違えると、壁の破損や雨漏りといったトラブルに発展する恐れがあります。
DIYでも取り付け可能な製品はありますが、法的な確認や構造面の安全性、見た目の美しさを考慮するなら、やはり専門のリフォーム会社に依頼する方が安心です。
プロに任せることで、建ぺい率のチェックからデザインの提案、施工までを一貫してサポートしてもらえるため、失敗のリスクを大幅に減らせます。

玄関に庇を後付けする際には、建ぺい率や雨樋などのポイントに加え、台風などの影響がないように考慮することも大切です。
まとめ
玄関に庇を後付けすることで、雨の日でも濡れずに出入りできるようになり、ドアまわりの汚れを防ぐことができます。また、建物全体の印象を整える効果もあり、外観の美しさを高められるとも魅力です。さらに、夏場の強い日差しを遮ることで玄関内の温度上昇を抑えるなど、快適な住環境づくりにも役立つでしょう。
一方で、設置費用やメンテナンスの手間、室内採光への影響などのデメリットもあるため、素材やデザイン、施工方法を総合的に検討することが重要です。
鈴与ホームパルでは、お客様の住まいやご希望に合わせた、最適な庇のご提案が可能です。玄関まわりの環境改善をお考えの方は、ぜひお気軽にご相談ください。 庇の設置によって、玄関まわりの快適性と美観を高め、住まいの価値向上を図りましょう。