リノベーションではどんな耐震補強工事が必要?知っておきたい耐震補強の基礎知識

長年住んだ家のリノベーションを考えている方の中で、耐震補強も一緒にすべきか迷っている方はいませんか。壁や床を解体することの多いリノベーションは、じつは耐震補強の絶好の機会といえます。
今回は、 一戸建ての中古住宅をリノベーションするときに知っておくと役立つ耐震補強の基礎知識や、補強工事の内容について解説します。暮らしやすさだけでなく耐震性も確保して、長く安心して暮らせる住まいをつくっていきましょう。

リノベーション+耐震補強の費用面におけるメリットにも注目です!
リノベーションと耐震補強は関係あるの?

はじめに、リノベーションという言葉の意味と、リノベーションと耐震補強の関係について見ていきましょう。とくに、費用や工期を抑えたい方は要チェックです。
リノベーションとは
大規模な改修を行い、住宅の機能や価値を高めることをリノベーションといいます。たとえば、間取りを大きく変える、新築のような見た目にするなどの場合に、リノベーションということがあります。一方リフォームは、修繕や交換を指すことが多いです。
しかし、機能や価値をどう判断するかは人によって異なるものです。また、リフォームでも構造まで修繕・改修すれば大規模な工事となります。そのため、 リノベーションとリフォームを明確に区別することは難しいのが現状です。
※この記事では、大規模な改修としてリノベーションという言葉を使っていきます。

当社では、名称ではなく工事内容で判断しているためイメージの行き違いがありません。
リノベーションするなら耐震性も見直そう
リノベーション=大規模改修では、壁・床・天井などを解体して工事を行うことが多いですが、その際に確認できるのが家の耐震性。壁の内側や床下を見ることで、大きな地震に耐えられる構造・状態になっているかを把握することができます。
また、リノベーションをする家は築年数の経った家であると想定できますので、何らかの耐震補強が必要なケースが多いもの。 いずれ耐震補強をするのであれば、リノベーションをするときに行なったほうが、費用も工期も抑えることができます。
また、旧耐震基準で建てられた木造住宅であれば、耐震補強することで補助金を活用できる可能性が高いです。そのため、リノベーションするのなら耐震性も見直すのが賢い選択といえます。

当社ではリノベーションのご相談を受けた際には、必ず耐震補強のお話をするようにしています。
リノベーションと併せて耐震補強をする際に知っておきたい基礎知識

ここからは、耐震補強に関する基礎知識をご紹介します。「新耐震」や「旧耐震」、「耐震等級」など、よく話題に挙がる言葉を中心にまとめました。基本を押さえておくと、リフォーム会社との打ち合わせや補助金などの制度を利用する際に役立ちます。
新耐震基準と旧耐震基準
1981年6月から適用されている耐震基準を「新耐震基準」といい、それ以前の耐震基準を「旧耐震基準」といいます。新耐震と旧耐震の大きな違いは、地震レベルの違いです。1978年に発生した宮城県沖地震の被害を受けて、以下のように見直されています。
新耐震基準 | 震度6強〜7程度の大きな揺れでも建物が倒壊しない構造 |
旧耐震基準 | 震度5程度の揺れで建物が倒壊しない構造 |
つまり、大規模地震に備えるためには、新耐震基準に適合する住宅であることが重要になってくるのです。

耐震リフォームでは新耐震基準を満たす工事を行います。
建物の地震対策の種類
耐震 | 地震の揺れに耐える 筋交いや耐力面材などで壁を強くして、地震の揺れに抵抗する |
制震 | 地震の揺れを吸収する 建物内部にダンパーなどの制振装置を設置し、 地震の揺れを吸収しながら揺れを抑える |
免震 | 地震の揺れを逃す 建物と地面とを切り離す免震装置によって、 地震の揺れを建物に直接伝えない |
建物の地震対策には、大きく「耐震」「制震」「免震」の3つの考え方があります。
「耐震」は地震エネルギーに耐えることを目的としており、比較的コスト抑えて施工しやすいため、戸建てで広く採用されています。「制震」は上階になるほど揺れを抑えられる仕組みのため、高層ビルなど高い建物で有効です。
建物に地震エネルギーを直接伝えない免震は、3つの中で最も揺れを抑えやすい工法といえますが、コストがかかる傾向があるため、採用する建物を選びます。

じつは伝統構法で造られた古民家は免震の構造になっています。
耐震等級
耐震等級とは、地震に対する建物の強さをあらわす住宅性能表示のことです。「住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)」によって定められています。
耐震等級は以下の3段階に分かれています。
耐震等級1 | 建築基準法が定める最低限の耐震性能 |
耐震等級2 | 耐震等級1の1.25倍の地震エネルギーに対抗できる |
耐震等級3 | 耐震等級1の1.5倍の地震エネルギーに対抗できる |
建築基準法が最低限守るべき基準を示すのに対し、品確法は任意の住宅性能を示すものです。建築基準法の耐震基準と同等である耐震等級1をベースに、耐震等級2、3がもうけられています。

長期優良住宅は耐震等級2以上とされています。
リノベーションと併せてできる耐震補強工事

リノベーションの際にどんな耐震補強工事ができるのか知っておくことも大切です。補強工事はどこを補強するかによって、以下の3つに分類できます。
・基礎
・壁・構造
・屋根
基礎
1つ目は、建物の基礎の補修・補強です。どんなに頑丈な壁や柱をつくっても、足元が弱ければ建物は維持できません。
【工事例】
・コンクリート基礎のひび割れを補修する
・コンクリート基礎に鉄筋を入れて強くする
・湿気やシロアリによって傷んだ土台を差し替える
ひび割れの補修は、樹脂を注入してひびをつなぐやり方が主流となり、比較的簡単かつ安価に行えます。一方、鉄筋コンクリートへの施工や、広範囲にわたり土台の差し替えが必要になった場合は、大掛かりな工事となり、相応の費用がかかります。
壁・構造
耐震補強の要となるのが壁や構造の耐震化。 大きく分けて「壁」と「接合部」という2つのアプローチ方法があります。
【壁の工事例】
・筋交いや構造用合板で壁の強度を上げる
・強度の高い壁を増やし、バランスよく配置する
【接合部の工事例】
・柱と土台の接合部を補強金物で固定する
筋交いや構造用合板を使った壁を耐力壁と呼びます。耐力壁がない家は、地震で横に揺れたときに倒壊してしまう可能性が高いです。
ちなみに筋交いとは、柱と柱の間に斜めにかける部材のこと。取り付けの際には補強金物でしっかりと固定することが義務付けられています。

阪神淡路大震災では、柱が土台から引き抜けてしまい倒壊につながった例が多く報告されています。
屋根
屋根を軽量化することでも耐震性を上げられます。屋根が重いと建物の重心が高くなるため、地震時に建物が大きく揺れてしまうためです。
【工事例】
・和瓦を、軽量瓦、化粧スレート屋根、金属屋根などにする
和瓦自体は耐久性のある優れた屋根材ですが、他の屋根材と比べて数倍の重量があります。耐震性を考慮する場合は、軽さを重視して選ぶのがポイントです。
耐震補強工事の方法や流れについては、こちらの記事で詳しくご紹介しています。
リノベーションでの耐震補強まとめ
リノベーションをする際に耐震補強を行なったほうがいい理由や、耐震補強工事の内容についてご紹介しました。
耐震補強は一般的なリフォームと比べ、工事を行う前と後で見た目に違いが現れにくいもの。そのため、耐震について意識していなければスルーしてしまうこともあるでしょう。
しかし、住まいの安全性は何より重要視すべき事柄です。鈴与ホームパルでは、お客様が将来直面するかもしれない問題を、先回りしてご提案することを心がけています。ご提案の結果、耐震補強工事を行うか否かは、もちろんお客様のご判断です。
工事をした直後だけでなく、何十年先も安全に心地よく過ごせる住まいにすることが、私たちの使命だと思っています。
この記事のポイント | ・リノベーションは耐震補強を見直す絶好のタイミング ・リノベーションと併せてできる耐震補強工事は大きく3つ |