COLUMNリフォーム豆知識
耐震 2024.03.04

リノベーションと同時に耐震補強工事もすべき?できる工事・基礎知識を解説

リノベーションと同時に耐震補強工事もすべき?できる工事・基礎知識を解説

建ててから年数の経った家のリノベーションを考えている方の中で、耐震補強も一緒にすべきか迷っている方はいませんか。壁や床を解体することの多いリノベーションは、じつは耐震補強の絶好の機会といえます。

今回は、 一戸建ての中古住宅をリノベーションするときに知っておくと役立つ耐震補強の基礎知識や、補強工事の内容について解説します。暮らしやすさだけでなく耐震性も向上させ、長く安心して暮らせる住まいをつくっていきましょう。

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リノベーション+耐震補強の費用面におけるメリットにも注目です!

リノベーションと同時に耐震補強工事もすべき?

リノベーションと一緒に耐震補強をすべきかを見ていく前に、リノベーションという言葉の意味を整理しておきましょう。リノベーションの定義は、以下のとおりです。

■リノベーションの定義

一般的には大規模な改修を行ない、住宅の機能や価値を高めることを指す

【工事例】
・間取りを大きく変える
・新築のような見た目にする など

※リフォームでも構造まで修繕・改修すれば大規模な工事となるため、リノベーションとリフォームを明確に区別することは難しいのが現状です。

※この記事では、大規模な改修としてリノベーションという言葉を使っていきます。

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当社ではお客様との認識のズレがないよう、名称ではなく工事内容で判断しています。

家の状態に応じて耐震補強の必要有無が変わる

耐震補強の必要性は、住宅の状態に応じて変わります。次のいずれかに当てはまる場合は、耐震性が低い可能性が高いです。

・木造で窓が多い・窓のサイズが大きい住宅
・旧耐震基準で建てられた住宅(1981年5月31日以前の耐震基準)

耐震の観点から見た場合、木造建築物において窓は弱点になり得る要素です。窓が多い、あるいは窓のサイズが大きい木造住宅は、その分柱の数や壁面積が少なくなるため、耐震性はどうしても低くなる傾向にあります

今から約40年前の1981年6月1日、現行の耐震基準の元となる耐震基準が施行されました。これ以前の耐震基準を「旧耐震基準」と呼び、これ以降の耐震基準を「新耐震基準」と呼びます。新耐震基準では、震度6強から7の地震で倒壊しないことを基準にしていますが、旧耐震基準では、そもそも震度6以上の地震を想定していません

なお、旧耐震基準か否かは建物の完成日ではなく、建築確認申請の受理日によって判断します。ただし、1981年5月31日以前であっても新耐震基準が適用されているケースも。詳細は図面や構造計算書で確認するようにしましょう。

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正確な耐震補強の必要性は、専門家による耐震診断によって判断しましょう。

耐震診断の費用や方法についてまとめた記事もございます。

公開時内部リンク設定:耐震診断の費用の目安とは?木造住宅などの構造別の診断の特徴についても紹介 >>

耐震補強の重要性

総務省消防庁の資料によると、最大震度7以上を観測した東日本大震災で被害を受けた住宅の多くは、旧耐震基準で建てられた建物であることが分かっています。そして、大きな被害を免れた住宅の多くが、耐震補強・改修を行っていたことも明らかにされています

つまり、耐震補強は地震の被害を最小限に抑えるために、重要な役割を果たしているということです。国土交通省でも、「令和12年までに耐震性が不十分な住宅をおおむね解消すべく、耐震化を促進する」と掲げています。

リノベーションをする家は築年数の経った家であることが多く、何らかの耐震補強が必要なケースが多いと考えられます。リノベーションと耐震補強はセットで考えることをおすすめします

耐震補強の重要性や考え方については、こちらの記事でも詳しく解説しています。

公開時内部リンク設定:耐震補強は意味がない?重要性を理解して耐震補強を行おう >>

同時に施工するとメリットが大きい

リノベーションと耐震補強をセットで行なうと、費用面でもメリットがあります。

リノベーションでは、壁・床・天井などを剥がして工事を行なうことが多く、建物内部を目視できます。建物内部の確認は、木造住宅の耐震診断(精密診断)で行なう過程の一つです。リノベーションの際に耐震性を調べれば、別途で費用をかけて耐震診断を行う必要がありません。

また、旧耐震基準で建てられた木造住宅であれば、耐震診断や耐震補強の際に補助金を利用できる可能性が高いです。将来、耐震補強の実施を視野に入れているのであれば、リノベーションの際に耐震性を見直すのが賢い選択といえます。

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当社ではリノベーションのご相談を受けた際には、必ず耐震補強のお話をするようにしています。

リノベーションと併せてできる耐震補強工事

では、リノベーション時にはどのような耐震補強工事ができるのでしょうか。耐震補強は工事をする場所によって、以下の3つに分類できます。費用相場とともに見ていきましょう。

耐震補強工事費用相場
基礎20万円~30万円(ひび割れを補修する場合)
壁・構造150万円〜200万円
屋根200万円〜300万円

上記の費用相場は耐震補強工事のみをする際の相場であるため、リノベーションと併せて行う場合は上記価格よりも費用を抑えられます。

基礎

建物の基礎の補修・補強です。どんなに頑丈な壁や柱をつくっても、足元が弱ければ建物は維持できません。

工事例・コンクリート基礎のひび割れを補修する
・コンクリート基礎に鉄筋を入れて強くする
・湿気やシロアリによって傷んだ土台を差し替える
費用相場20万円~30万円(ひび割れを補修する場合)

ひび割れの補修は、樹脂を注入してひびをつなぐやり方が主流となり、比較的簡単かつ安価に行えます。一方、鉄筋コンクリートへの施工や、広範囲にわたり土台の差し替えが必要な場合は、大掛かりな工事となり、相応の費用がかかります。

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外側部分の基礎のクラック(ひび)の有無は、ご自身でも確認できます。

工事例■壁の工事例
・筋交いや構造用合板で壁の強度を上げる
・強度の高い壁を増やし、バランスよく配置する
■接合部の工事例
・柱と土台の接合部を補強金物で固定する
費用相場150万円〜200万円

筋交いや構造用合板を使った強度の高い壁を「耐力壁」と呼びます。耐力壁が少ない場合は、地震で横に揺れたときに倒壊してしまう可能性が高いです。耐力壁が少ない家は旧耐震基準で建築された家屋に多く見られ、耐力壁の数はあってもバランスよく配置されていない家は、2000年より前に建築された家屋に見られます。

ちなみに筋交いとは、柱と柱の間に斜めにかける部材のこと。取り付けの際には補強金物でしっかりと固定することが義務付けられています。

木造住宅の耐震補強工事に使われる筋交いとは?役割や重要性をご紹介>>

屋根

屋根を軽量化することでも耐震性を上げられます。屋根が重いと建物の重心が高くなり、地震時に建物が大きく揺れてしまうためです。

工事例和瓦を、軽量瓦、化粧スレート屋根、金属屋根などにする
費用相場200万円〜300万円

和瓦自体は耐久性のある優れた屋根材ですが、他の屋根材と比べて数倍の重量があります。住宅の耐震性を高めるときは、「軽量であること」が重要なポイントです。

耐震補強工事の方法や流れについては、こちらの記事でも詳しくご紹介しています。
木造住宅の耐震補強方法は?補強の流れも確認しておこう >>

リノベーションと併せて耐震補強をする際に知っておきたい基礎知識

ここからは、耐震補強に関する基礎知識をご紹介します。基本を押さえておくと、リフォーム会社との打ち合わせや補助金などの制度を利用する際に役立ちます。

建物の地震対策の種類

耐震地震の揺れに耐える
筋交いや耐力面材などで壁を強くして、地震の揺れに抵抗する
制震地震の揺れを吸収する
建物内部にダンパーなどの制振装置を設置し、地震の揺れを吸収しながら揺れを抑える
免震地震の揺れを逃す
建物と地面とを切り離す免震装置によって、地震の揺れを建物に直接伝えない

建物の地震対策には、大きく「耐震」「制震」「免震」の3つの考え方があります。

「耐震」は地震エネルギーに耐えることを目的としており、比較的コスト抑えて施工しやすいため、戸建てで広く採用されています。「制震」は上階になるほど揺れを抑えられる仕組みのため、高層ビルなど高い建物で有効です。

建物に地震エネルギーを直接伝えない免震は、3つの中で最も揺れを抑えやすい工法といえますが、コストがかかる傾向があるため、採用する建物を選びます。

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じつは伝統構法で造られた古民家は免震の構造になっています。

耐震等級

耐震等級とは、地震に対する建物の強さをあらわす住宅性能表示のことです。「住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)」によって定められています。

耐震等級は以下の3段階に分かれています。

耐震等級1建築基準法が定める最低限の耐震性能
耐震等級2耐震等級1の1.25倍の地震エネルギーに対抗できる
耐震等級3耐震等級1の1.5倍の地震エネルギーに対抗できる

建築基準法が最低限守るべき基準を示すのに対し、品確法は任意の住宅性能を示すものです。建築基準法の耐震基準と同等である耐震等級1をベースに、耐震等級2、3がもうけられています。

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長期優良住宅は耐震等級2以上とされています。

リノベーションにおける耐震補強まとめ

リノベーションをする際に耐震補強を行なったほうがいい理由や、耐震補強工事の内容についてご紹介しました。

耐震補強は一般的なリフォームと比べ、工事を行う前と後で見た目に違いが現れにくいもの。そのため、耐震について意識していなければスルーしてしまうこともあるでしょう。

しかし、住まいの安全性は何より重要視すべき事柄です。鈴与ホームパルでは、お客様が将来直面するかもしれない問題を、先回りしてご提案することを心がけています。ご提案の結果、耐震補強工事を行うか否かは、もちろんお客様のご判断です。

工事をした直後だけでなく、何十年先も安全に心地よく過ごせる住まいにすることが、私たちの使命だと思っています。

この記事のポイント・リノベーションは耐震補強を見直す絶好のタイミング
・リノベーションと併せてできる耐震補強工事は大きく3つ
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